広報・情報紙
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2022/10/1発行
大田区文化芸術情報紙『ART bee HIVE』は、2019年秋から大田区文化振興協会が新しく発行した、地域の文化・芸術情報を盛り込んだ季刊情報紙です。
「BEE HIVE」とは、ハチの巣の意味。
公募で集まった区民記者「みつばち隊」と一緒に、アートな情報を集めて皆様へお届けします!
「+ bee!」では、紙面で紹介しきれなかった情報を掲載していきます。
アートな人:ジャズピアニスト・ジェイコブ・コーラーさん + bee!
アートな人:「アート/空家 二人」ギャラリスト・三木仙太郎さん + bee!
来日以来、蒲田に拠点を置くジャズピアニストのジェイコブ・コーラーさん。20枚以上のCDを発表し、人気テレビ番組『関ジャニの仕分け∞』の「ピアノ王決定戦」で優勝。近年ではストリートピアノ*の演奏者としてYouTubeでも人気です。
ⓒKAZNIKI
日本との出会いについてお教えください。
「アメリカで日本人ヴォーカリストの長谷川コッペさんと一緒にエレクトロニックジャズをやっていて、ライブツアーもしていました。一旦、彼女は日本に戻ったんですけど、日本でライブをやりませんかと誘いがあって、2003年に初めて日本に来ました。3ヶ月ぐらいを2回、半年ほど日本にいました。その時、拠点にしたのが蒲田。僕にとって初めての日本は蒲田です(笑)。」
日本のジャズ・シーンにどんな印象を持たれましたか。
「びっくりしたのはジャズクラブがすごく多いこと。ジャズミュージシャンもいっぱいいるし、あとジャズを聴く専門の喫茶店がある。居酒屋とかに行ってもジャズがかかっているところが多い。こんなに人気があるとは知りませんでした。
2009年に再来日するのですが、最初は知り合いがコッペさんとか二人ぐらいしかいなかった。そこで、いろんなジャズセッションに行ったりして、ネットワークを作っていきました。日本には素晴らしいミュージシャンがいっぱいいる。ギターでもベースでもどんな楽器でも。それに、スウィングジャズもあるし、アバンギャルドジャズもあるし、ファンクジャズもある。どんなスタイルでもありますね。」
セッションする相手に不足するってことはない(笑)。
「そうですね(笑)。セッションをしているうちに、半年くらい過ぎたらいろいろ声がかかるようになったんです。沢山のバンドとツアーをしました。有名な方のサポートをやったりして、それが評判になり、少しずつ仕事も増えていきました。でも、食べていける程じゃない感じだった。YouTubeのお陰でだんだんファンが増えてきた。10年前ぐらいからだけど、この5年ぐらいから本当に爆発した感じです。」
ストリートピアノを始めたのはいつ頃からでしょうか。
「2019年の秋にYouTubeで知りました。色んなところで、普段音楽を聴かない人も聴いたりして、面白いなと思っていました。そんな時に友人からピアニストのよみぃ*さんと都庁で連弾*しませんかとお誘いがあった。それが僕の最初のストリートピアノです。」
ストリートピアノの魅力は何でしょうか。
「ホールでのコンサートはお客さんがみんな僕を知っているし、応援してくれるわけですね。ストリートピアノは僕を知らない人もたくさんいるし、他のピアニストもいる。ウォーミングアップもないし、1曲しか弾けない上に演奏時間は5分しかない。お客さんが喜んでくれるかどうかも分からない。毎回、プレッシャーを感じます。でも、その緊張感が刺激的で面白いんです。
ストリートピアノはある意味で、新しいジャズクラブです。何をやるか、何が起きるか分からない。一緒にコラボしようとか、ちょっとジャズセッションみたいな感じ。スタイルは違うけど、雰囲気とかやり方が似ていると思います。」
ジェイコブ・コーラーストリートライブ(蒲田東口おいしい道計画「おいしい収穫祭2019」)
提供:(一社)蒲田東口おいしい道計画
日本の曲もずいぶん取り上げていらっしゃいます。日本の音楽の魅力についてお話ししていただけますか。
「アメリカのポップスに比べると、メロディが複雑でコードが多い。進行が結構ジャズっぽいところもあるし、転調があったりメリハリがあって、ピアノに向いていると思います。特に最近3、4年の曲は、最初から最後まで展開がいっぱいあるからアレンジしがいがある。星野源やYOASOBI、米津玄師、King Gnuの曲も好きです。」
最初に取り上げた日本の曲は何でしょうか。
「2009年に横浜でピアノ教室を開いた時に、生徒さんがルパン三世のテーマを弾きたいと言って、それで曲をチェックしたらカッコいい。当時、週末に楽器店で、教室の宣伝のためにピアノを弾いていたんですが、ルパン三世のテーマを弾くと、みんな凄く反応してくれた。それが最初のピアノアレンジです。それまではずっとバンドで演奏していて、実はソロピアノには興味がなかったんです(笑)。」
蒲田の魅力についてお話しいただけますでしょうか。
「僕が日本に来て最初に暮らした街が蒲田だったから、蒲田が日本の普通だと思っていました。その後、ツアーで日本中を回って、蒲田が特別だと知りました(笑)。蒲田の街は不思議な組み合わせなんです。下町の部分もあるし、現代的なところもある。ちっちゃい子どももいるし、年配の方もいるし。ちょっと怪しいところもあるし、いろんな国からの人もいる。何でもありますよね、楽しい街なんです(笑)。」
今後の活動についてお教えください。
「この2年間はコロナ禍の関係で、コンサートはほぼ全部キャンセルでしたが、今年になって戻ってきました。コンサートツアーで、ほぼ毎週末は全国のどこかで演奏しています。今はコンサートで訪れた街で、ストリートピアノや屋外演奏をしているんです。お城の前とか、湖の上をボートに乗って弾いたりしてね。この街ではどこで屋外演奏しようかと考えるのも楽しいです。それを撮影してYouTubeで流しています。」
コンサート以外ではどうでしょうか。
「全曲オリジナルのCDを出したいと思っています。今までは人の曲をアレンジしてきました。アレンジをする時は原曲の良さを保ちながら自分のテイストを入れるわけだから、作曲家と自分が半分半分。アレンジは今後も続けるとは思うけど、次は100%僕を表現したい。100%ジェイコブのCDを出したいという気持ちがあります。」
蒲田の街で何かやってみたいことはおありでしょうか。
「最近面白いピアノを作ったんです。知り合いの調律師の人がやってくれたのですが、小さいアップライトピアノにベースドラムを付けて黄色いペンキ塗ってもらった。そのピアノで蒲田駅西口の駅前広場でストリートピアノ・イベントをやってみたいですね(笑)。」
*ストリートピアノ:街なかや駅・空港など公共性のある場所に設置され、誰でも自由に演奏できるピアノ。
*よみぃ:ピアニスト・作曲家・太鼓の達人大会アンバサダー・YouTuber。15歳の時初めて作曲した曲が「太鼓の達人全国大会課題曲公募」にて採用され、最年少受賞を記録。即興編曲能力を活かして、19歳でYAMAHAの最新技術「人工知能合奏システム」の技術実演者に抜擢される。4年後、同システムのAI教師・アドバイザーに任命される。
*都庁おもいでピアノ:2019年4月8日(月)、都庁南展望室のリニューアルオープンに伴い、芸術家の草間彌生がデザイン監修したピアノが同所に設置された。
ⓒKAZNIKI
1980年、アメリカアリゾナ州生まれ。14歳でプロミュージシャン、16歳でピアノ講師として活動を始め、ジャズピアニストとして活躍。アリゾナ州立大学ジャズ科卒業。YouTubeのチャンネル登録者数は、2つのアカウントあわせて54万人以上にのぼる(2022年8月現在)。
YouTube(Jacob Koller / The Mad Arranger)
蒲田の住宅街にあるごく普通の一軒家、それが2020年7月にオープンしたギャラリー「アート/空家 二人」です。1階のフローリングの洋室とキッチン、2階の和室と押入れ、さらには物干し場までが展示スペースになっていて、アート作品を1万円から購入できるユニークなコンペ方式の販売を行っています。
2階和室に展示された久留島 咲『小さな島から来たって』(左)と『ただいま解体大作戦中』(右)
ⓒKAZNIKI
ギャラリーを始めたきっかけをお教えください。
「普段アートに触れる機会がない人との接点を作りたかったんです。どうしたら実現できるのかを考えた時に、一つは人間・アーティストですね、アートを作っている人間の面白さが伝わる場所を作りたいと思いました。多くのアーティストがいて、様々な個性があって、一人一人それぞれに違うのが観てわかるようにしたかった。
目標は日本のアートの層を厚くすることです。例えば、お笑いだったら若手芸人のための劇場ライブがいっぱいあります。そこでいろんなネタをすることで、できることの幅が広がり、同時にその手応えを確かめられます。お客さんとも長期的な関係性を築くこともできる。同じようにアートの世界において、アーティストがお客さんからのリアクションを受け止め、継続的な関係性を築ける場所が必要だと思いました。それを実現するのがこのスペースです。作品を販売するということは、作品を購入してもらうことでアートと関係性を持ってもらうということです。」
ギャラリーの名前の由来は何でしょうか。
「最初は本当にシンプルに一人二人の二人という名前でした。一人で表現するだけでは1じゃなくて0。誰にも見せてないなら存在しないのと一緒です。だからといって、万人ウケを求める必要はなく、誰かに深く刺さる表現を追求する。一人ではなく、もう一人、二人かなと。そこから名付けました。ただ、会話の中で『今日の二人どうだった?』みたいだと訳がわかんなくなっちゃうので、二人をカタカナみたいな感じで「ニト」と呼び名でしています(笑)。作品・アーティストとお客さんが関係を作っていく場所にできればと考えています。」
とてもユニークな販売方法をとっていらっしゃいますが、お話しいただけますか。
「一つの展覧会に10人のアーティストが参加します。全員の作品を1万円で販売して、作品が購入されたら次の展覧会でプラス1万円の2万円で販売する。それが購入されたら次はプラス2万円で4万円、そしてプラス3万円で7万円、プラス4万で11万円、プラス5万円で16万円、6回目の出展でプラス6万円で22万円。ここまで値段が上がっていったら卒業です。
同じ作品は展示しません。展示会ごとに作品を全部入れ替えます。2回の展示会で連続して売れなかった場合は、他のアーティストと交代になります。」
先ほどお聞きしたコンセプト=様々な個性、継続的な関係につながっているわけですね。
「そうです。」
毎回違う作品を出展するのは、作家にとって実力を試されます。どれくらいのスパンで開催するのですか。
「2ヶ月に一回です。」
それは凄い。アーティストとしての体力がいりますね。ストックはもちろん、自分の中にしっかりした背景がないと大変ですね。
「そうなんです。だから、今持っているものを全部吐き出した時に、何かがギリギリ生まれてくるのが面白い。アーティストの限界を超えた何か広がっていく感じがあるんです。」
作家さんの選定基準をお教えください。
「お客さんのリアクションと向き合いつつ、自分の軸を持ってぶれないことが重要です。なぜ作るのか、見せるのか、絶えず問われるので、作品で応えていける人にお願いしたいと思ってます。それが二人という意味でもあります。」
1階展示スペースに飾られた森山泰地『LAND MADE』
ⓒKAZNIKI
なぜ蒲田にオープンしたのですか。
「僕は横浜で生まれたんですけど、蒲田は神奈川に近い東京ですので親しみがあった。それに、すごく人の匂いがする街なのが好きです。平板化されてないというか、様々な顔がある、昔ながらの暮らしを営んでいる方も多くいらっしゃる重層的な街ですね。」
なぜ一軒家のギャラリーなのでしょうか。
「お客さんが作品を飾った時の実際の見え方が想像しやすいと思います。自分の家だったら、こういう風にできるかなと思いを巡らせられるのが大きな理由です。通常のギャラリーの真っ白な空間=ホワイトキューブの中だと格好良く見えるけど、これどこ置くんだみたいなことがありますよね(笑)。」
どんな方たちが作品を購入されているのでしょうか。
「今は近隣の方、蒲田の人が多いですね。僕がたまたま蒲田の街で出会った方とか、先日は蒲田のハンバーガーショップのパーティーでほんの少しお話した方が作品を購入してくださいました。ご縁を感じます。 ギャラリーという現実空間にあるスペースを持つのはなかなか大変です。今はインターネットがあるので、スペースなんかいらないんじゃないかと思っていた部分もありました。スペースを持ったことで、僕が会いたかったアートと接点のなかった人たちと実際に出会えるのは大きな喜びです。」
住宅街に馴染む「アート/空家 二人」
ⓒKAZNIKI
作品を購入したお客さんからのリアクションはいかがでしょうか。
「作品を飾ることで日常が華やいだとおっしゃる方。いつもは作品をしまっているけど、たまに取り出してそれを覗くと、何か自分の別次元の世界に触れることができるという方。本当にいろんな方がいらっしゃいます。映像作品も販売しているので、持っているという関係性を楽しんでいらっしゃる方も多いかなと思います。」
ギャラリーをやってみて気付いたことはありましたか。
「お客さんは鋭いということですね。アートの知識がなくても、作品のアティテュード=姿勢を鋭く読み解き、理解してくださるんです。僕はお客さんと作品について話しながらギャラリーを回るのですが、僕自身が気づかなかった観点を教えていただくことが多々あります。本当に勉強になりますね。
二人ではYouTubeで展示会の作品紹介をしています。初期の頃はプロモーションのために展示会が始まる前に映像を撮って、会期中盤に流していました。でも、お客さんと話した後の自分の感想の方が厚みがあって面白い。最近は会期が終わった後に流しています。」
それプロモーションとしてはまずいですね(笑)。
「だから、俺ダメだなって思っちゃうんですけど(笑)。」
頑張って2回やってみたらいかがですか。
「そうなんですよね。今は開催期間の終盤に出すぐらいが一番いいのかなと思っています。」
今後についてお話しいただけますでしょうか。
「毎回毎回次の展覧会を面白くすることですね。そのためにはアーティストとぶつかりながら、いい展覧会を積み重ねていくことが大事だと思っています。同時に、より広い人に二人の活動を知っていただくのが僕の役目だと考えています。万人に受けるものではないものこそ、広げなければ作品が刺さる誰かに届きません。多くの人を巻き込んで、アートを日常に溶け込む文化にしていきたいですね。」
最後に区民の皆さんにメッセージをお願いします。
「展覧会を見ていただくだけで楽しいと思います。気軽にアートと触れる場所として来ていただけたら嬉しいです。」
三木仙太郎さん
ⓒKAZNIKI
1989年神奈川県生まれ。東京藝術大学美術研究科修士課程修了。2012年に個展「身に余る皮」で、アーティストとしてデビュー。作品をつくることの意義を問うなかで、アートと人を繋ぐことに関心が移り、2020年に蒲田でアート/空家 二人を立ち上げる。
注目EVENT情報につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、今後中止または延期となる可能性がございます。
最新情報は、各問合せ先にてご確認頂きますようお願い申し上げます。
日時 | 10月15日(土)17:30開演 |
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場所 | 神奈川県立音楽堂 (神奈川県横浜市西区紅葉ヶ丘9-2) |
料金 | 大人4,500円、高校生以下2,800円 |
主催・問合せ | An Music Lab 090-6941-1877 |
日時 | 11月3日(木・祝)11:00~19:00 11月4日(金)17:00~21:00 11月5日(土)11:00~19:00 |
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場所 | さかさ川通り (東京都大田区蒲田5-21番から30番周辺) |
料金 | 無料 ※飲食や物販などはそれぞれ有料です。 |
主催・問合せ | (一社)蒲田東口おいしい道計画 蒲田東口商店街商業協同組合 oishiimichi@sociomuse.co.jp((一社)蒲田東口おいしい道計画事務局) |
日時 | 開催中~11月6日(日) |
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場所 | 京急蒲田駅、京急線大田区内12駅、大田区内商店街・銭湯、大田区観光情報センター、HICity、羽田空港 |
主催・問合せ | 京浜急行電鉄株式会社、日本空港ビルデング株式会社、大田区、大田観光協会、大田区商店街連合会、大田浴場連合会、羽田みらい開発株式会社、株式会社京急イーエックスイン、株式会社京急ストア、株式会社京急百貨店 03-5789-8686 または 045-225-9696(京急ご案内センター 9:00~17:00 年末年始は休業 ※営業時間は変更となる場合がございます) |
日時 | 11月8日(火)18:30-20:00 |
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場所 | 大田区民プラザ 会議室 (東京都大田区下丸子3-1-3) |
料金 | 無料・事前申込制(10/25〆切) |
主催・問合せ | 大田区文化振興協会 |
日時 | 11月25日(金)19:00開演 |
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場所 | 大田区区民プラザ 大ホール (東京都大田区下丸子3-1-3) |
料金 | 3,000円、大学生以下2,000円 |
主催・問合せ | (有)サンビスタ 03-4361-4669(エスパッソ・ブラジル) |
公益財団法人大田区文化振興協会 文化芸術振興課 広報・広聴担当