

広報・情報紙
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2024/10/1発行
大田区文化芸術情報紙『ART bee HIVE』は、2019年秋から大田区文化振興協会が新しく発行した、地域の文化・芸術情報を盛り込んだ季刊情報紙です。
「BEE HIVE」とは、ハチの巣の意味。
公募で集まった区民記者「みつばち隊」と一緒に、アートな情報を集めて皆様へお届けします!
「+ bee!」では、紙面で紹介しきれなかった情報を掲載していきます。
住宅街の街並みになじむ外観
大岡山駅の改札を出て、東京科学大学(旧 東京工業大学)を正面に、左手の道を線路沿いに洗足駅方面に進み、駐車場の先を右折すると閑静な住宅街が広がります。その5つ目のブロックの左側にある瀟洒な白い家、そこが画家・西村計雄*のアトリエ兼自宅をそのまま利用した美術館「西村計雄のアトリエ」です。
西村計雄は戦後パリを拠点に活躍した洋画家で、ピカソを育てた画商ダニエル=ヘンリー・カーンワイラーに「東洋と西洋の美を融合した」として高く評価されました。それを契機に1953年よりパリを中心にヨーロッパ各地で個展を開催。作品はフランス政府やパリ市が買い上げ、藤田嗣治に次いでフランス国立近代美術館に展示された二人目の日本人画家です。パリでの活躍から晩年にいたるまで、西村計雄を支えた長女で館長の田中育代さんにお話を伺いました。
開館はいつですか。
「2002年4月5日です。父が亡くなって2年後です(2000年12月4日没)。4月5日は1981年に亡くなった母の90回目の誕生日でした。1991年にこのアトリエを建てて、翌年2月から父、主人と私、主人の母、私たちの子供たち2人、家族6人で暮らしました。」
アトリエを公開しようと思われたきっかけは何でしょうか。
「父が晩年楽しく絵を描き生活したアトリエを、ファンの皆さんに見ていただきたくてオープンしました。パリには画家のアトリエを開放して見せているところがいくつもあります。前からずっと素敵だなと思っていました。作品はもちろん、絵筆やペインティングナイフといった画材、パイプや帽子などの愛用品もそのまま展示しています。」
来館される方はどういう方でしょうか。
「父の絵を好きな人たちが訪ねてくださいます。パリで出会った人、日本で知り合いだった人、そういう人たちがみんな集まって来てくれる。皆さんから父の色々な思い出話をお聞きして、私の知らない父を知ることができます。父の話をこのアトリエで聴いていると、何か父が今も生きているような気がします。いつまでも父と一緒にいる気がします。ここはファンの皆さんに絵を見ていただくために作ったのですが、結局は私がここで父と生活した長い期間を思い出している。私はすごく幸せだなと思います。」
昔からのファンの方が多いのですか。
「若い人もいらっしゃいます。父の絵は、色が明るくてあまり年寄りっぽくないから、若い人にも結構わかるのだと思います。わざわざここを調べて来てくださいます。本当に、いろんな人がいらっしゃいます。あんまり年齢は関係ないですね。絵が好きな親子の方もいます。この前、子どもさんが絵画好きで、子どもを絵描きにしたいと思う人なのか、父の絵を見に来てくれました。でも、かえって大人よりも子どもの方がよく分かるというか、自然に楽しんでくれます。父の作品を展示することで、私は外へ足を運ばなくても、多くの人と知り合いになれます。父が残してくれた最高の贈り物だと感謝しています(笑)。」
館長はここで西村先生が制作している姿を見ていらっしゃる。このアトリエで先生の思い出といえば何でしょうか。
「もう何しろ、朝から晩まで絵を描いていましたね。朝起きたら描く。『ごはんだよ』と言ったら2階へ食べに行って、また降りて描く。それで暗くなったら描かない。電気の光では絵を描かなかったので、陽があるうちだけ描く人だった。そういう人だったので、朝は早かったです。太陽と一緒に起きて絵を描く。そういう生活をしていました。」
描いてらっしゃる時は集中して、話し掛けづらい感じだったのでしょうか。
「そういうことはなかったです。父は楽なんですよ(笑)。話し掛けてもいいんです。楽しく描いているから、人が来ても気にしない。孫たちが後ろで遊んでいたりしても気にしない。もう夢中になっちゃうから、危なく孫たちを踏んづけそうになったりしていました。でも、父は『ここで遊んではダメだ』とか、そういうことは言いませんでした。何にも気にせず平気というか、あんまり難しいことを言わない人でした。父は面白い人でしたね。戦争中は海軍にいました。それで『ピストンはゴットントン』とかいう自分で作った歌を歌いながら絵を描いていました(笑)。」
パリから帰国後、日本の箱に魅了され精力的に制作した「箱絵」
たくさんの作品が展示されていますが、特に思い出深い作品はございますか。
「あそこにかかっている真ん中の2枚の絵ですね。最初、父が一人でパリへ行きました。私たち家族は日本にいたわけです。当時の父はもう貧乏で16区のお金持ちの家の物置みたいな屋根裏部屋を借りてあの絵を描いていたんです。小さな窓があって壁があって、『こんなに狭い場所で絵を描いてますよ』という絵です。パリに行く前、日本で書いていたのが左の絵です。戦争のすぐ後に、弟が父の海軍の帽子を被って庭で脚立に座っている絵です。だから、パリに行って左の絵から右の絵に画風が変わったんです。」
水彩画も数多く展示されていますね。
「スケッチですね。父が絵を描く前に、一番先に描く絵。油絵ができる元の絵です。1箇所に集めて飾ってみました。完全には描いてはいないですが、あの絵があるから大きい絵ができるんです。あれが大切。あれがしっかりしてないと油絵が上手くいかない。父の頭の中の描こうと思うものが、全部あのスケッチの中に入っています。私には見えないですけどね(笑)。あのスケッチが描かれて、あと何日か何カ月かたつと、大きな絵になって出てくるんです。」
絵だけではなくて、先生が日常使われていたものを当時のままに展示されています。特に館長の思い出深いものはございますか。
「たくさんのパイプが残っています。ごろごろしていると思います。いつもパイプをくわえながら絵を描いていました。なんかもう放さなかったというかんじですね。」
絵筆も画材も生前そのままのアトリエ。中央の大きな2作品はパリ渡航前と後の代表作
西村計雄愛用のパイプたち
最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
「たくさんの方に父の絵を観てほしい。お時間のある方は是非いらしてしてください。絵の好きな人とは話が合うものだから、いいお友達になれるんです。」
作品や展示品を見るだけではなくて、館長さんにご説明いただき、お話していただけるのでしょうか。
「はい。いろいろ話をしながら、楽しく時間を過ごせたらいいなと思います。堅苦しい美術館ではないですね。」
館長の育代さん(右)とご主人の田中努さん(左)
日本の画家。北海道共和町生まれ。1909年(明治42)〜2000年(平成12)。
1975年、パリ・クリティック賞(パルムドール)受賞。
1981年、勲三等瑞宝章受賞。
1992年、北海道岩内町に「西村計雄美術館」オープン。
2007年、パリ16区グラン・ゾーギュスタン通15番地に記念プレート設置(日本人画家初)。
赤いドームのひさしが目印
東急目黒線「洗足駅」の改札を出て右へ、東急ストア駐車場の向かいにあるオリーブの木と赤いドームのひさしが目印のお店、そこが影絵作家・藤城清治さんプロデュースの「ラ・ビー カフェ」です。フードやドリンクの提供はもちろん、オリジナルグッズや版画なども販売しています。藤城先生が散歩の休憩でいらっしゃることもあるそうです。藤城清治さんは1924年(大正13)の東京生まれ、今年でちょうど100歳になられます。1946年(昭和21)に人形劇と影絵の劇場「ジュヌ・パントル」を結成(後年、「木馬座」と名称変更)。1948年(昭和23)から日本の戦後を代表する雑誌「暮しの手帖」に影絵を連載。1961年(昭和36)、等身大のぬいぐるみ人形劇を創設し、TV番組「木馬座アワー」のキャラクター「ケロヨン」は国民的アイドルとなりました。まさに戦後の日本を代表するアーティストです。長女でオーナーの藤城亜季さんにお話を伺いました。
オーナーの亜季さん
お店を始められたきっかけをお教えください。
「2014年、父は展覧会をずっとやっていて、地方に行った時はずっと座りっぱなしでした。それで、腰の具合が悪くなって、歩けなくなったんです。病院で見てもらったら、腰部脊柱管狭窄症でした。」
ちょうど10年前、90歳になられた頃ですね。
「それでも次から次に締め切りがあって、その間を縫って病院に通っていました。ボルトを入れなきゃいけない状況になって、『もう入院してください』と言われ手術しました。1ヶ月近く入院して、1年経って散歩できるようになりました。父は毎日リハビリをしようと雨の中でも散歩に行くんです。北千束駅の近くに小さな公園があって、そこに座るためのものではないですが小さな岩がある。そこに傘を差して休憩している父を見ると、凄く胸が痛くなりました。そんなある日、父がここを見つけてきて、カフェをやろうと言ってきたんです。リハビリのお散歩をする途中の休憩場所として作りました。」
藤代清治さんのオリジナル作品に囲まれた明るい空間
オープンはいつでしょうか。
「2017年3月12日です。実をいうと、当時、父が飼っていたラビーという猫の誕生日。ちょうどその日に合わせてオープンしました。」
今も看板やコースターなど、いろんなところにラビーちゃんがいますね。
「そうです。ラビーのためのカフェです。」
お店のデザインは藤城先生でしょうか。
「父がデザインしました。全体の色味も藤城清治らしい色合いを自分で考えて、壁やタイルもそうです。たまたま父の好きのオリーブの大きな木がお店の前にあったんですね。小さかった窓を大きくしました。さらに自分の好きな木を植えて、外の景色が1枚の絵に見えるようにしました。全て藤城清治の想いを形にしました。」
飾られている作品は定期的に変わるのでしょうか。
「春夏秋冬、季節に合わせて入れ替えます。それ以外にも、新しい作品ができると随時替えています。」
インテリアもこだわっていらっしゃいますね。
「はい、椅子も父のデザインです。実はご希望の方にはお売りしているんですよ。那須の美術館に色々な種類の椅子を飾っています。東京に現物の見本はないのですが、サンプル写真はあります。それを見て選んでいただければ、那須からお送りします。」
お店で使ってらっしゃるカップも先生がデザインされているとお伺いしています。
「コーヒーやお茶をお出しするカップは藤城清治が手描きした一点ものです。」
手描きの一点ものカップ
背もたれがかわいいオリジナルチェア
1階だけでなく素敵な出窓のフロアがありますね。
「1階がカフェで、3階で版画を作っています。自分たちで制作すると細かいところまでちゃんと目が届きます。業者さんだとどうしても締め切り優先で、色合いが微妙に違ったりしてしまう。キャンパス地に刷りたい時もあるのですが、平たい紙ではないので色の深み重み鮮やかさがなかなか出てこない。ここで自分達が作れば、父と私がしっかり仕上がりをコントロールすることが出来ます。」
この上で版画を作ってらっしゃるのですね。
「はい。ここはアートの世界。アートの人がいるカフェです。」
店員さんに作品について伺ったり、お話したり出来るのですね。
「はい、そうです。カフェのスタッフのほとんどがアートが好きな人です。ある程度話せます。分からないことがあったら私に聞いてもらって、皆さんの質問に答えられるようにしています。」
今後の具体的な展覧会・イベントについてお教えください。
「何か新しいイベントがある時には、ホームページに掲載しています。地方での個展やサイン会などを行う時も事前に報告しています。冬は那須の美術館のクリスマス用のセッティングをしなきゃいけない。美術館にも是非いらしてください。」
最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
「父は今年でちょうど100歳になりました。高齢者になってもしっかり手を動かせば、まだまだ何でも出来ます。歳をとったから、あれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけないというのではなくて、常に前を向いて暮らしていくことが大切です。自分で絵を描いたり、ものを作ったり、考えたりしていかないと、どんどんどんどんボケてしまう。ボケるということは全体的に体も悪くします。藤城清治は100歳になった今もずっと作品を作り続け、元気に歩いています。皆さんまだまだ大丈夫です。」
壁には季節や新作の版画が飾られ、購入することも出来る
※要予約(当日のみ)
1924年(大正13年)東京生まれ。日本の影絵作家。1995年(平成7年)春、勲四等旭日小綬章受章。1996年(平成8年)、「藤城清治影絵美術館」開設。1999年(平成11年)、日本児童文芸家協会より児童文化特別功労賞受賞。2013年(平成25年)、栃木県那須町に「藤城清治美術館」が開館。
今号で取り上げた秋のアートイベント&アートスポットをご紹介します。ご近所はもちろん、アートを求めてちょっと遠出をしてみてはいかがでしょうか。
最新情報は、各問合せ先にてご確認頂きますようお願い申し上げます。
日時 | 10月25日(金)~11月3日(日) ※10月29日(火)休廊 11:00-18:30 ※最終日は17:00まで |
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場所 | Gallery MIRAI blanc (東京都大田区大森北1-33-12 ダイヤハイツサウス大森103) |
料金 | 入場無料 |
問合せ |
Gallery MIRAI blanc |
日時 |
11月1日(金)17:00-21:00 |
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場所 | さかさ川通り (東京都大田区蒲田5丁目21番から30番周辺) |
料金 | 無料 ※飲食や物販などはそれぞれ有料です。 |
主催・問合せ |
蒲田東口エリアおいしい道イベント実行委員会 |
テーマは『タイムテーブルのない映画館』
決まっているのは、映画館で9時間を過ごすこと、だけ。
あとはその日の雰囲気を見ながら内容が決まっていく、ライブ感あふれる映画イベントです。映画好きが集まる“天国”作ります。
日時 |
11月3日(日)11:00開演 |
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場所 | テアトル蒲田/蒲田宝塚 (東京都大田区西蒲田7-61-1 東京蒲田文化会館4F) |
料金 | 一般6,000円、25歳以下3,000円 |
主催・問合せ |
(公財)大田区文化振興協会 |
日時 |
11月3日(日)14:30開演 |
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場所 | 大田区民ホール・アプリコ 大ホール |
料金 | 一般2,000円、小学生以下1,000円 |
出演 | 岡崎肇(指揮)、村瀬安紀(ピアノ) |
主催・問合せ |
クラウン少女合唱団 |
共演 |
石川高(笙)、花岡操聖(二十五絃) |
後援 |
NPO 法人大田まちづくり芸術支援協会、一般社団法人日本童謡協会、NPO 法人日本少年少女合唱連盟 他 |
日時 |
11月30日(土)10:00-16:00 |
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場所 | 区内各参加工場等(詳細は後日公開の特設サイトにて) |
料金 | 各工場の実施プログラムによる |
主催・問合せ |
おおたオープンファクトリー実行委員会 |
後援 |
大田区、公益財団法人大田区産業振興協会、東京商工会議所大田支部、野村不動産パートナーズ株式会社 |
公益財団法人大田区文化振興協会 文化芸術振興課 広報・広聴担当