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2025/7/1発行
大田区文化芸術情報紙『ART bee HIVE』は、2019年秋から大田区文化振興協会が新しく発行した、地域の文化・芸術情報を盛り込んだ季刊情報紙です。
「BEE HIVE」とは、ハチの巣の意味。
公募で集まった区民記者「みつばち隊」と一緒に、アートな情報を集めて皆様へお届けします!
「+ bee!」では、紙面で紹介しきれなかった情報を掲載していきます。
西蒲田にあるアトリエビル「HUNCH」を拠点とする彫刻家・渡辺元佳さん。メインテーマは都市空間と人間の関係性。人々が精神的に都市空間とつながる手助けとなるように、公共空間を中心に彫刻作品を発表しています。
HUNCH内のアトリエにて、作品『SRRC #004』(2023) と渡辺さん ⒸKAZNIKI
渡辺さんは彫刻の中でも、パブリックアートの作家として知られています。パブリックアートと渡辺さんのテーマである『都市空間と人間の関係』についてお話しいただけますか。
「東京は清潔で、機能的で、情報の圧力がとても強い。例えば、人々は綺麗な電車に詰められて、時間通りに正確に運ばれていく。車内は中吊り広告で溢れている。『あなたの人生はこうですよ。これ買った方がいいですよ』とずっと見せ続けられている。人間にとって都市空間はそれでいいのか僕には疑問です。遊び心、毎日が楽しいと思えること、街への愛着、一人一人の人生の中での彩りが重要だと感じています。機能性や合理性とは違う、余韻や余白を作ることで、人と空間を繋ぐ。それがパブリックアートだと思っています。」
日常生活を豊かにするアートですね。
「アート愛好家が、美術館やギャラリーに、好きなアートを見に行くのは素晴らしいことです。しかし、それは限られた人です。こども時代に美術館に一度も行ったことのない人はたくさんいます。現代社会において、日常生活の中のアートや景観が重要だと思います。美術館やギャラリーに足を運んだことのない方々にも楽しんでもらえるようなアートや、アートのあり方を開拓したいと思って活動しています。」
『YOUwe.』(渋谷MIYASHITA PARK 2020) photo by Hiroshi Wada
渡辺さんの作品には動物の彫刻が多いのはなぜでしょうか。
「動物好きが理由ではありません。動物の形が言語・宗教・文化を超えて、多くの人とコミュニケーションできると考えているからです。人間ではない生き物に対して、擬人化したり、自分の気持ちを投影して、自己を浄化したり、他者を思いやったり、何かストーリーを展開するイマジネーション、人間にはそうした機能が備わっています。人間の彫刻だとやっぱり他者になってしまう。人間だと時代性、性別、ファッションなど、文化的に様々な意味合いが入ってしまいます。動物はニュートラルなんです。」
動物の中でもチンパンジーの彫刻が印象的です。
「熊とかの作品も作っていますが、チンパンジーは構造的にも人間に似ています。4本足で歩く動物ではなく、2足歩行ができて手が使える生き物。人間に一番近いけれども、人間ではない存在。人間が一番感情移入しやすいのが、チンパンジーです。」
色では黄色の作品が目立ちます。
「黄色は元気が出る色だと思っています。黄色であることで、ポジティブで元気が出る彫刻になると思っています。最近使っているのは、蛍光イエローの塗料です。蛍光色はとても面白いものです。人間の可視領域外の光、紫外線とか赤外線とかがありますが、可視領域外の光を可視光に変換して光っているのが蛍光色です。元々の色ではなく、エネルギーを変換して、波長を変えて発光しているんです。本来、注意喚起の塗料なので、視認性もいい。ヘリポートにも使われる塗料なので、耐久性も優れていいます。野外に設置するパブリックアートには最適です。」
『SRR』 photo by Kohei Mikami
パブリック=公共性とは何でしょうか。
「公共の場所があれば、パブリックだというわけではありません。人が何を求めているか、どうしたら人が快適にいられるかを考えなければなりません。居心地がいいからパブリックな場所になるんです。現状は場所を用意しただけの“パブリック”がとても多い。その場所でどんなことが行われて、どんな人たちが、どんな感情になったらベストなのか、それを思いやることが重要です。それがアートの目線だと思います。」
『Find Our Happiness』(中国中山市 2021) photo by UAP
大型彫刻を街の中で自由に移動させるプロジェクトについてお教えください。
「町の再開発とか、都市空間はその街を利用する人たちではない人間が既に決めてしまっています。パブリックアートの彫刻もそうです。アーティストだったり、施主だったり、アートディレクターが決めちゃって、あとはもう動かせません。でも、ここにある彫刻があっちにあったらどうだろう、そっちに移動させたらどうだろう。風景がどう変わるかを試してもらうんです。彫刻を移動することで、街の様々な可能性が見えてくる。いつもとは違う感覚・感情が生まれてきます。」
実際の反応はいかがでしたか。
「とても良かったです。どんどん面白くなって、じゃあこっちがいい、あっちがいいと大変でした。大田区でも蒲田の街で実施させていただきました。祭りの山車のようなものですね(笑)。日常の見慣れた景色が変わることが重要です。日常空間に対する新しい視点が生まれるし、柔軟性もみんなの中に生まれる。街へのさらなる愛着や思い出を作り出せたと感じました。」
ⒸKAZNIKI
こども向けのワークショップについてお話しください。
「東日本大震災をきっかけにはじめました。震災直後、アートとは何だろう、僕らは何をやっているんだろうと考えさせられました。被災地に仲間と一緒に行って色々とお話をお聞きしました。やはり皆さん大変な時ですから、なかなかこどもたちに手が回らない現実が見えてきました。そこで、アートでこどもたちに楽しみを提供できるのではないか考え、ワークショップを始めました。純粋にモノを作る楽しさを体験してもらいたい。人生いろいろなことがあると思いますが、一つでもうれしかったことや上手くいった思い出があれば、辛い時の糧になります。震災が落ち着いてからも、これからの時代を背負っていくこどもたちと関わることが大事だと思い、今も各地でこども向けワークショップを続けています。」
『ぽたん』(大田区立矢口南児童公園 2009)
生活に根ざしている、コミュニケーションが身近にある。
西蒲田の印象をお聞かせください。
「スタジオを設けて7年になります。西蒲田は最高ですね。飲み屋の街ですがバイオレンスの香りがない。どこかピースフル。生活に根ざしているから、コミュニケーションが身近にあるからでしょうね。ヒューマニティスケールです(笑)。大通りから一歩入ると周辺・界隈がある。その雑多な感じがすごく気持ちいい。そんな余白が、街にはとても重要です。」
最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
「このスタジオを会場にして、こども向けワークショップ『モ!アソビ』を行っています。アーティストのスタジオに来ること自体が面白い経験ですし、色んな種類の道具があって楽しいですよ。その中から気になる道具が一つ見つかるだけでも、自分の世界が広がると思います。遊びに来ていただければ嬉しいです。」
様々な機材・工具が並ぶHUNCH 内のアトリエにて ⒸKAZNIKI
1981年北海道伊達市生まれ。主な作品に宝童稲荷神社参道『猿結参道』(銀座 2016)、MIYASHITA PARKのボルダリングウォールのシンボルアート『YOUwe.』(渋谷 2020)。高さ5.7mの大型彫刻『Find Our Happiness』(中国中山市 2021)などがある。
2025年夏、札幌に誕生。総合ディレクター・渡辺元佳
アートと遊びを融合させた複合施設として、札幌市内の創生イースト地区にオープン予定。音楽やファッション、演劇など様々なアーティストが集結し、多彩なアートプロジェクトが展開されます。
所在地/北海道札幌市中央区大通東7-18-1
大城通り商店街と蓮沼熊野神社に挟まれた住宅街に2023年11月にオープンした「さいとう読書室」。全面ガラス戸、コンクリート張りの土間、むき出しの木組みの梁(はり)など、モダンでどこか懐かしい私設図書館です。オーナーの齊藤貞博さんと息子さんで空間デザインを担当した建築家の齊藤良博さんにお話を伺いました。
まるで全面がエントランス、開放的な店構え
さいとう読書室を始めたきっかけをお教えください。
良博「父は元々国語の教師でした。僕がこどもの頃から蔵書が凄かった。本当に家が傾くぐらいの本がありました。改めて倉庫を借りたり、別の家にも本がびっしりありました。本はしまってあるだけではゴミと変わらない(笑)。それでは勿体ない。地元の人に貸し出したり、本を中心に人が集まる場所を作るのがいいと考えました。僕の仕事場が欲しかったのもありますが、この勿体ないもの=父の蔵書を皆さんに見ていただきたいというのが最初のきっかけです。」
左から良博さん、貞博さん、日紀さんの3代で運営
モダンでありながら、どこか懐かしい温もりある空間
図書館ではなく、読書室と名前を付けられた理由をお教えください。
貞博「収容している本の数といい、スペースといい、図書館と名乗るほど立派じゃない。ちょっと恥ずかしいから読書室としました(笑)。あと、江戸時代後期の京都にあった山本読書室*という漢学と本草学*の私塾にあやかりました。」
良博「山本読書室はただ読書している場所ではなくて、人々が集まって、色んなことを研究したり勉強する場所でした。さいとう読書室も展覧会や様々なアートイベントが行われる場所になってほしいと名付けました。『さいとう』を漢字から平仮名にしたのは硬いのが嫌だったからです。ちっちゃいこどもたちも入って来られる、おじいちゃんおばあちゃんも来られる、そういう場所になったらいいとの思いからです。」
貞博「本に関してはここで読むこともできますし、貸し出しもしています。貸し出しは無料で、原則1ヶ月間です。」
貸し出し期間が長いですね。公設の図書館でも2週間程度です。
良博「ある程度時間がないとね、必ずしも皆さんが読書の時間をたっぷり取れるわけではない。それにここにあるような堅い真面目な本は、読むのに時間がかかります(笑)。」
扱っているジャンル・作品・作家についてお教えください。
貞博「私は古典の教師でした。古典関係の本が多いですね。あとは古代史、それから民俗学や地史も多いです。」
良博「入り口に近いところに一般的な書物が置いてあって、裏に行くほど専門的な本が多い。好きな方はすごく好きで、じっくり見られる方がいらっしゃいます。デザイン建築関係の専門書は私の蔵書です。入口付近には文庫や新書も置いてあります。こども向きの本もあります。」
松の木が魅力的なカフェスペース
かつての基礎を利用した椅子
内装・空間設計も魅力的ですね。
良博「元々は本当に普通の家です。床と天井を外すと、大体これくらいの大きさが出ます。日本の建物は部屋を小割りにしますが、全部外してしまうと1室空間にもできる。ちちろん、古い建物なので補強はいくつか入れていますが、1室で使うことで色々な可能性が出てくると思っています。イベントを行なったり、映画鑑賞会もできる。実は東京には空き家がまだたくさんあって、皆さん困っている。その回答として一つのプロトタイプができないかと昔から考えていました。それができたかどうかはわかりませんが、そんな思いからこの場所をデザインしました。」
古家のリユースについてお話しいただけますか。
良博「元と同じ用途で使わないことがポイントかなと思います。空き家を住居として使おうとすると結構大変です。今の住宅と性能が断然違う。みんな『新しいアパートやマンションの方がいいよね』となる。ただし、ここのような公共的な場所は居住用の家までの性能はいらない。ちょっとした暑さ寒さが大丈夫だったり、水回りがなくても平気だったりする。住むとなったら、ちょっと抵抗ある人もいらっしゃると思う。仕事場だったり、こうした図書室だったり、あるいはカフェだったら、転用がしやすい。そういうアイデアは必要だと思っています。」

2階の展示・イベントスペース
図書館活動以外に、どんなイベントを行っていますか。
良博「ここには2階もあります。去年のゴールデンウイークに、2階をギャラリーとして使って、写真家であり作家でもある清水裕貴*さんのイベント&展覧会『写真を読む読書室』を開催しました。写真は読むもの、本は見るものというテーマで、写真の見方であったり、本の見つけ方であったりをワークショップも含めてやっていただきました。昼間はギャラリーとして使って、夕方には清水さんが今話したいアーティストや作家を呼んでトークイベントをする。その後、夜はバーにして飲みながらみんなでまた話す。今まで一番大きいイベントでしたし、やりたかったことが一番できたのがこの会でした。一番印象に残っています。そこまで大きいイベントではないものでは、映画の上映イベントを月2回のペースで行なっています。」
上映作品はどなたが選ぶのですか。
貞博「(常連さんの意見を参考に)私です。上映の後におしゃべり会を行なっています。映画は背景に社会的にも時代的にも色んな事情が織り込まれています。あるいは人によって見方が違います。同じ映画を見た人たちとの語り合いは非常に意義があると思っています。」
ご自宅がこのようなスペースに変わって、地元の方の反響はいかがですか。
貞博「ここは外から丸見えでしょう。それで中には本棚が並んで本がぎっしり入っている。皆さん、『一体何をする場所なんだろう』と好奇心を持って見てくださるのですが、それでいてね『入りにくい』とおっしゃる。私は立ち止まっている人には、『どうぞ中に入ってください』と声をかけています。この辺りも都市化してきて、ご近所とのお付き合いがありません。2、3軒離れたら、ほとんどわけが分からない(笑)。」
昔からのお友だちやお知り合いがいらっしゃるのではないですか。
貞博「昔からの知り合いはもうほとんどいないですね。「さいとう読書室」を始めたことで、地元とのつながりが出来た感じです。私は中学生の時からずっとここに住んでいます。昔からこの街は庶民的で、そこは変わりませんが、アパートやマンションが非常に増えました。独身の方、単身赴任で来る方、若い方、外国の方が非常に増えています。ご近所づきあいがほとんどない。そういう状況になっていると思います。」
今後の展開・展望についてお教えください。
貞博「先ほどお話ししたように、現代人はご近所づきあいもほとんどなく、ばらばらで孤立化している。ネット空間でも色んなことが出来ると思いますが、ここはリアルに人と人が顔を合わせながら活動できる場にしたい。日常の人生とは違った、もう一つ別の世界を持つことは大事だと思います。小さいですがここを拠点にして、文化的な営みをしながら、人々が繋がりを持てるようになればいいと思っています。」
*山本読書室:儒医山本封山が江戸時代後期に京都に開いた私塾。日本博物学の西日本の拠点だった。
*本草学:中国古来の植物を中心とする薬物学。日本には平安時代に伝わり、江戸時代に全盛となり、中国本草書の翻訳・解釈にとどまらず、日本に自生する植物・動物などの研究から博物学・物産学を目的とした学問に発展した。
*清水裕貴:1984年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学映像学科卒業。写真家。グラフィックデザイナー。2016年三木淳賞受賞。2018年「手さぐりの呼吸」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。
今号で取り上げた春のアートイベント&アートスポットをご紹介します。ご近所はもちろん、アートを求めてちょっと遠出をしてみてはいかがでしょうか。
最新情報は、各問合せ先にてご確認頂きますようお願い申し上げます。
大田区立嶺町小学校6年生140名の児童が「こころもよう」をテーマに制作した作品を展示する企画。ギャラリーと美術館の違いを教える特別授業を踏まえて、実際にギャラリーでの企画展の流れを体験します。また同校卒業生で主体美術協会、大田区美術家協会などで活躍されている洋画家・井上樹里氏も授業に参加、同テーマによる賛助出品もあります。
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| 日時 | 7月23日(水)~8月3日(日)※月・火 定休 11:00-18:00 |
|---|---|
| 場所 | ギャラリー・フェルテ (東京都大田区下丸子3-27-15-101) |
| 料金 | 無料 |
| 問合せ | ギャラリー・フェルテ 03-6715-5535 |
アフリカの楽器が勢揃い!リズムあり、ダンスあり、歌あり。独特のグルーヴを身体感じる生ライヴ。
岩原大輔
| 日時 | 8月9日(土)17:00開演(16:30開場) |
|---|---|
| 場所 | 大田区民プラザ 小ホール |
| 料金 | 全席指定 一般 2,500円、中学生以下 1,000円 ※0歳以上入場可能 ※2歳以下は1名までひざ上無料。(席が必要な場合は有料。) |
| 出演 | 岩原大輔(ジャンベ、ンタマ)、コテツ(ジャンベ、ドゥンドゥン、バラフォン、クリン) ほか |
| 主催・問合せ |
(公財)大田区文化振興協会 |
公益財団法人大田区文化振興協会 文化芸術振興課 広報・広聴担当
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