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2026/1/5発行
大田区文化芸術情報紙『ART bee HIVE』は、2019年秋から大田区文化振興協会が新しく発行した、地域の文化・芸術情報を盛り込んだ季刊情報紙です。
「BEE HIVE」とは、ハチの巣の意味。公募で集まった区民記者「みつばち隊」と一緒に、アートな情報を集めて皆様へお届けします!
「+ bee!」では、紙面で紹介しきれなかった情報を掲載していきます。
アトリエであるSTUDIO ZUGAで新作に取り組む荻野さん
大田区雑色にアトリエを構えるアーティスト・荻野夕奈さん。花や人物を主なモチーフとして、具象から抽象へと画面を再構築する独自の半抽象画を描いています。一度描いた画面の上に描き重ねたり、描いたものをペインティングナイフで削ったり、布で拭き取るなどを繰り返し、重層的な絵画を作り上げます。
アートとの出会いについてお教えください。
「10歳の頃から油絵を始めました。初めて現代アートと出会ったのは中学生の時。東京都現代美術館ができたばかりの頃です。中学校の教室にジャスパー・ジョーンズ*展のチラシが置いてあり、行ってみようと思いました。遠目で見ると国旗や標的など、記号的なものが描かれているのですが、近くで見ると、新聞紙や日常にあるものがキャンバスにコラージュされたり、数字や文字などが複雑な筆致で描かれています。作品も展示空間もスケールが大きく、自分がこれまで見てきた絵画とは全く異なった世界観に圧倒されました。」
出身は大田区とお聞きしていますが、大田区はアーティストとしての荻野さんにどんな影響を与えましたか?
「小学校の頃、洗足池を描く写生会がありました。子供の頃から自然を描くことが好きだったので、木々や池の水の写り込み、赤い太鼓橋などに美しさを感じ、水彩絵の具で描いたことは今でも覚えています。また、小学校の同じクラスに現代アーティストの娘さんや、現代アート作品を撮影するカメラマンの娘さんがいて、遊びならアートに触れることができました。90年代当時はまだまだ現代アートと聞くと敷居が高く、よく分からない世界と言われていましたが、自分の場合はそんな友人たちの影響で日常の一部のように感じていたので、今思えば大変貴重な経験だったと思います。」
『p-030425_1』(2025)
テーマについてお伺いします。デビュー当初から花を描き続けていますね。
「子供の頃から建物や日用品などの人工物より自然を描くことが好きでした。私が生まれ育った大田区は、大自然があるわけではないけれど、住宅街の中に木々が植えられていたり、お庭に綺麗な花が咲いていたりします。デビュー当初に発表していたシリーズ「GARDEN」は、近所の住宅のお庭に咲く花や、時々見かける蝶をモチーフに描いていました。私の日常で特に目をひくモチーフが花だったのだと思います。」
その後、ヌード(身体)を描かれます。花から肉体へと発展していった理由は何ですか。
「見ること、描くこと」に素直な気持ちでスケッチをするように描いていた「GARDEN」シリーズから、徐々に自分自身のメタファーとしての「花」を描くようになっていきました。そのうちに、実際に人も描いてみたいと思うようになっていったんです。花は美しいですが着飾っている訳ではありません。そこで人もヌードから描いてみることにしました。人も花も、本質を探るように何層にも絵の具を重ねています。」
『p-110325_1』(2025)
半抽象表現だから描けるものがあるのですか。
「私の絵は、「半抽象的に見える絵」という表現が近いかもしれません。半抽象的に見える部分も、実際にはリアルなものを見て描いています。絵が写実的に見えない理由は、筆やナイフが大きかったり、時折対象や光や影を大きく捉えたり、動きや温度を即興的に色に置き換えて塗ったりしているからだと思います。」
なぜ完全な抽象画にしないで半抽象なのですか。
「自分としては写実、抽象、半抽象というように、意識的に描き分けているのではなく、モチーフを描いた結果が半抽象的に見えているという感覚です。人物画であれば、性別や人種が分からない部分や衣類などの人工物をいわゆる写実的に描くことが多いです。動きや感情、温度など、目で見えないものを捉えようとするときは、抽象的(大きなストロークや色面)で描いています。」
『p-011125_1』(2025)
技法についてお聞きします。なぜ重層性にこだわるのですか。
「写真は一瞬の時間をとらえる媒体に比べて、絵画は一枚の平面作品にするのに1週間から数ヶ月の制作時間の蓄積です。今の時代に絵画を描く必然を探るとしたら、私はその蓄積を見せることが必要であると考えています。」
一つの画面の中にいくつもの時間や思いが描かれているのですね。
「表層と内層が織り重なって一つの画面になっています。描き始めはあえて完成図を想定しません。1日1日の新鮮な感性を重視して絵の具を乗せていきます。時間をかけて描き進めていた箇所が後半見えなくなったり、ナイフで削ることもあり、遠回りをしているようにも思いますが、私にとっては正直なキャンバスの向き合い方です。」
4才児から大人、障がいのある方々が同じ場所で制作するワークショップノコノコ
「WORKSHOP NOCONOCO(ワークショップノコノコ)」についてお教えください。
「『ワークショップノコノコ』というのは、2008年に大田文化の森の美術室で始めた絵画教室のことです。障がいのある私の妹の同級生たちが集まり、大田区の育成会の方々のご協力のもと立ち上げました。私は学生の頃から障がいがある方々の絵画に強い魅力を感じていました。私は10歳のころから美術教育を受けながら絵を描いていたので、彼らの溢れる才能に自分には無いものを感じていたのだと思います。」
定期的に活動しているのですか。
「現在は月3回金曜日、大田区中央にある障害者サポートセンター(さぽーとぴあ)で活動しています。4歳から大人、美大受験生、障がいのある方など様々な方が1つの空間で絵を描いています。同じ課題を行うのではなく、それぞれが自分のテーマで制作するので、お互いが刺激し合い高め合える場になればと思っています。2年前からは大田区文化振興協会と『+ART(プラサート)』というプロジェクトを始めました。このプロジェクトは、大田区の福祉作業所の自主製品をアートの力によってより魅力的で購入したくなる製品にしていく、ワークショップ型のプロジェクトです。ワークショップノコノコは、利用者さんの才能を引き出しつつ、楽しんで制作できるように、これまで培ってきた経験を活かして提案しています。」
趣味で絵を始めてみたい方から芸大・美大を目指す方まで。少人数制デッサン・絵画講座“KAMATA ART SEMINAR”
六郷の魅力についてお話しください。
「六郷はすぐ近くに多摩川があり、自然豊かで穏やかな時間の流れを感じます。また、どこか懐かしさを感じるご近所つながりがある街だと思います。私はご縁をいただき、「空家等地域貢献活用事業」で昨年南六郷にスタジオを構えました。平日は主に私の制作のために使用していますが、土日(12:00-15:00)は美術講師の鷹取まゆ先生による『KAMATA ART SEMINAR』という絵画教室を開催しています。鷹取先生は大手美術予備校の主任、総合芸術高校の美術講師として現在も務められ、藝大美大受験の専門的な知識を豊富に有していて、アートの世界に活躍する人材を数多く輩出しています。漫画家として活躍している山口つばささんの作品「ブルーピリオド」にも協力しており、とても人気のある先生です。スタジオは絵画教室用にも環境を整えていますので、ぜひ大田区のみなさんにも本格的なデッサン・絵画を学びにいらしていただきたいです。」
*ジャスパー・ジョーンズ:1930年生まれ。アメリカの画家、彫刻家。代表作は色彩を重ねた新聞紙のコラージュを蜜蝋で固めた『旗』(1954〜55)。以降「標的」や「数字」などをモチーフにした絵画を制作。60年代には様々なオブジェを画面に貼りつけた作品を発表。
ジャスパー・ジョーンズ展は、1997年6月28日(土)〜8月17日(日)東京都現代美術館で開催された回顧展。
*+ART(プラサート):公益財団法人大田区文化振興協会による取り組み。福祉施設などで生産する「自主生産品」の魅力をより高めるため、施設とアーティストをつなぐプロジェクト。
*ART FACTORY城南島:大田区城南島にある約3000平米の倉庫をリノベーションした都内最大級アート施設。館内にはアート作品の鑑賞スペースやアーティストが作品制作を行うスタジオ(アトリエ)がある。
1982年東京都生まれ、2007年東京藝術大学大学院美術研究科を修了後、アーティスト活動を開始。国内外での個展・グループ展多数。
会期:開催中~2026年1⽉12⽇(⽉) 各⽇:11時〜20時 ※最終⽇は18時閉場
会場:京都 蔦屋書店 5F エキシビションスペース(京都府京都市下京区四条通寺町東入二丁目御旅町35 京都髙島屋S.C.内)
東京ガラス工芸研究所は日本トップクラスの設備や第一線で活躍する講師陣を抱え、ガラス工芸のあらゆる技法を学べるガラス専門教育機関です。1981年の設立以来1,000人以上の卒業生を送り出し、多くの人材を輩出しています。近年では、仕事と両立して学べる夜間コースや趣味のガラス工芸講座、気軽にオリジナルのガラス作品が作れる体験教室も用意されています。理事でご自身もガラス作家である大本研一郎さんにお話を伺いました。
切子を指導する大本さん
設立のきっかけについてお教えください。
「現東京ガラス工芸研究所所長の松尾敬子と早稲田大学でガラスの研究をしていた由水常雄*の二人が、1981年に川崎で始めました。かつて由水先生は新宿でガラス工芸教室を開いており、松尾が通っていました。その二人が日本初のガラスの専門学校を起こそうと意気投合したのが始まりです。松尾は普通の主婦で、ご主人が医師で古い病院が空き家になっていたので、そこを学校にしたそうです。当時は、ガラス工芸を教える学校はほとんどありませんでした。」
学校の特徴・魅力についてお話しください。
「何より学べる技法の多さです。各分野の専門講師陣と充実した設備のもと、伝統的な技法から新しい技術まで学べます。ガラス工芸における幅広いスキルを習得することが出来ます。」
様々な技法を習得すれば、それらを組み合わせて新たな独自の作品が生まれそうですね。
「最近はそれが主流になってきています。単一の技法だけでは過去の作家と同じになってしまう。色々な技法を学んでいると作品の幅が広がる。大きなアドバンテージになります。就職についても同様です。以前は吹きガラスの工場なら吹きガラスだけをやりたい人材を求めていました。近年は企業側も色々な展開をしていますから、当校の生徒のような様々な技法を知っているガラスに対する知識が広い人が求められています。就職希望者のほぼ100パーセントが就職できます。」
大本さんも東京ガラス工芸研究所の卒業生だと伺っています。
「もともと機械修理関係のサラリーマンでした。他人の作ったものを修理ばかりしていたので、自分で何かを作りたいと思った。それで、会社を辞めました(笑)。何を素材に作ろうかと色んな素材を見ていた時に、ガラスに出会いました。ガラスの勉強が出来るところはないかと調べたら、この学校があったので入ったという感じです。1997年当時は、ここと富山にもう一つしかガラスの専門学校がなかった。」
ガラスの何が大本さんを惹き付けたのですか。
「あまりに一般的な形容ですが、透明できれいだったからです(笑)。たくさんの作品を見たわけでもなく、切子*とか吹きガラス*とかいった技法についても調べたわけでもありません。ガラスが面白そうだからガラスをやってみようと、本当にそれだけです(笑)。」
充実した環境のもと、ガラス作家としての基礎技能・基礎知識の習得を目指す
何か学生時代の思い出があればお教えください。
「とても自由でした。切子を教わって夢中になってしまい、他の授業にはあまり出ませんでした。切子ばかりやっていましたが、それでも怒られなかった。むしろ『もっとやれ!やれ!』という感じでした。もちろん、切子は一生懸命に作っていました。多分、先生たちも見ていてくれたのでしょう。『あいつはまあいいか』と自由にやらせてもらいました。」
この学校で得たものの一つは出会い、あとは何ですか。
「やはり技術です。学校なので聞いたら何でも教えてくれる。先生方は皆さん独立した作家ですが、何も隠さない。『多分これは秘密だろうな』と思うこともちゃんと教えてくれる。職人としてどこかの会社に入っていたら、この学校で習った技術を同じだけ学ぶにはとても長い時間が掛かったと思います。ここでは短期間で教えてもらえて、それを実践する機会もたくさんある。徒弟制度では『見て覚えろ』が普通で、理屈なんか進んで教えてくれないです。」
息を吹き込み成形する「吹きガラス」
講師の皆さんは全て作家活動をされているのですか。
「この学校ができた当時はガラス工芸を教える先生という職業はなかったので、色んな工場から職人を集めたそうです。創立者の松尾敬子にはアーティストを育てるという理念があったので、職人だけではなく作家活動をされている方も多くいらっしゃいました。」
大本さんも講師になられて直ぐに作品を発表されたのですか。
「ここに残ると決まった時点で作家を目指さないといけないので、学生の頃から作家としての勉強も始めました。卒業した時から本格的に作品を作り始めました。幸運なことに、日本工芸会*が主催している日本伝統工芸展に初挑戦で入選しました。1回目はすぐ通ったのですが、そこから後は入ったり落ちたり、なかなか大変でした(笑)。」
竹細工を切子で表現した大本さんの作品。『青被切子鉢』と『緑被硝子切子皿』
耐熱ガラスの扱いを学ぶ「酸素バーナー」
学生を指導するにあたって大切にしている点をお教えください。
「何かものを作ることは自分自身の分身を作ることです。それをいつも意識して作りなさいと言っています。しっかりと時間と手間をかけて作れば、必ず物に表れる。手を抜いたものは、誰が見てもすぐに分かります。卒業する学生に対しては、よく切子細工に喩えて言うのですが、卒業時はまだまだ荒削りの状態です。そこからだんだん細かく削っていって、最後にピカピカに研磨して切子が完成するように、みなさんもまだまだ修行して技術を磨かないといけない。常に学ぶ気持ちを忘れないでいて欲しいです。」
ガラス表面をカットする「カット・花切子」
プロ養成コース以外にガラス工芸講座があります。どんな方が受講しているのですか。
「やはり趣味で習われる方です。大体週1回で来る方が多いです。社会人が中心ですが、高校生もいます。男女比でいうと女性が7割。前は女性の割合がもっと多かった。近頃は、男性も増えてきています。」
体験教室というのは、どんな方が参加されるのですか。
「旅行客の方が結構多いです。旅行先での体験コースを紹介するサイトがたくさんあるのですが、吹きガラス体験コースはそんなにありません。しかも都内となると、さらに数が少なくなる。統計はとっていないですが、多分8割ぐらいが東京以外の方です。海外の人も結構いらっしゃいます。残り2割ぐらいが近辺の人で『ここは前から知っていて、いつかやりたかったんですよ』という方たちです。」
最後に区民の方にメッセージをお願いします。
「私が常に願っているのはガラス工芸の普及です。まだまだ知らない方が多い。吹きガラスにしても、コップ一個作るにしても、『ああ、こうして作るのですか!』という方がいらっしゃる。ガラス工芸とはこういうものだと知っていただければと思います。体験してもらうのが一番ですが、まずはたくさんの人に見ていただきたい。散歩がてら、ぜひ一度お越しください。」
*由水常雄:1936年、徳島県に生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了。ガラス工芸史、東西美術交渉史専攻。多摩美術大・早稲田大・岩手大・日本女子大などで教鞭を執る。1981年、ガラス作家養成校・東京ガラス工芸研究所を開設。主な著書『ガラスの道』(1973)、『江戸・明治のガラス(1979)、『古代ガラス』(1980)、など。
*切子:ガラスの表面にカットを入れて模様付けをする技法、またはそのように加工されたガラス製品。
*吹きガラス:高温で溶かしたガラスを金属製の吹き竿に巻き取り、息を吹き込んで成形するガラス工芸の技法。
*公益社団法人日本工芸会:重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)を中心に伝統工芸作家、技術者等で組織する団体。工芸分野重要無形文化財保持者含め正会員約1,200名が所属。同会が文化庁・NHK・朝日新聞社と主催する「日本伝統工芸展」は昭和29年から年一回毎年開催されている。
1967年、兵庫県生まれ。2000年、東京ガラス工芸研究所研究科修了。東京ガラス工芸研究所代表理事、ガラス作家。伝統的な江戸切子の技術に新しい技術も取り入れながら独自の作品を制作している。公益社団法人日本工芸会 正会員。
会期:2026年2月25日(水)~3月1日(日) 各日:10:00~18:00
※初日13:30開場、最終日は15:30閉場
会場:目黒区美術館 区民ギャラリー(東京都目黒区目黒2-4-36)
大田南六郷一郵便局の真向かいにあるのが2018年オープンの「危機裸裸商店」。日本を代表するゴス*・一点物のアート衣装のショップです。オーナーでデザイナーの後藤ききさんにお話を伺いました。
オーナーでデザイナーのききさん
ゴス・衣装との出会いについてお教えください。
「ちっちゃい頃から戦隊モノのTVドラマを見ても悪役が素敵で好きでした。小学生の時に、映画『バットマン』*や『シザーハンズ』*を観て『あ、これだ!』と思いました。ダークサイドに惹かれました。」
制作を始めたきっかけは何だったのですか。
「原宿にある「CA4LA」という帽子店に勤めていました。私は羽田高校の美術科で、油絵を描いていました。それで、絵がかけるなら制作やってみなさいということで、シルクハット等にペイントした一点ものの帽子を作らせてもらっていました。その当時、ゴスのクラブ・イベントがあって、通い始めたんです。ゴスっぽい衣装は日本であんまり売ってるところがなくて、クラブに着ていく衣装を自分で作り出したのが始まりです。」
そのクラブ・イベントはどんなものですか。
「六本木でやっていたイベントで、ゴス・ファッションの人たちが集まって、ゴス・ロック*やポジティヴ・パンク*、80年代ニューウェイブ*で踊るパーティーでした。」
危機裸裸商店を始められたきっかけをお教えください。
「ゴス・イベントにブースを出させてもらい、色々なオーダーをいただくようになりました。色々作りたいし、時間がなくなってきて、お店を辞めたいと言ったんです。そしたら、社長が『自分で店をやれ』とおっしゃってくださった。それで、同潤会アパート(現在の表参道ヒルズ)を紹介していただきお店を始めました。実家で使っていた家庭用のミシンと食卓の椅子を1個持って行き始めました(笑)。それが21歳の時で2001年です。」
店名の由来についてお話しください。
「もともと妹と二人でイベント販売をしていました。姉妹で活動しているのが恥ずかしかったので、周りの人たちには「キキララです」と言っていました。それで皆さんが「キキララ商店」と呼ぶようになって、『キキララ商店始めます』とお知らせを携帯で打っていたら、たまたま今の漢字が出てきた。『あっ、漢字いいんじゃない!』となって、この名前になりました(笑)。」
お店のコンセプトについてお教えください。
「危機裸裸島という島があるんですけど、他の人と同じ服を着ないという民族性があるんです。その思想を受け継いだのが危機裸裸商店です。このお店はオペラ座の衣装部屋でもあります。自分の理想の主役になれる洋服がある場所です。」
帽子はもちろん、コルセット、シューズ、アクセサリー、インテリアまで、危機裸裸商店の世界観でコーディネートできるのですね。
「作りたいものを作っているだけなんです。色々研究したくなるので、これはどうやって作ったんだろうと考えたりして、その延長上に色んなものを作りたくなってしまう、色んなものが出来てしまう。」
エレベーターで降りた地下空間に並ぶ帽子やバッグ
世界で一つしかないドレスやコルセット。それは着るアート。
六郷でリニューアルオープンされた理由はなんですか。
「表参道のお店は雑誌に取り上げてもらって、たくさんの方が来てくださいました。その後、東京・大阪に5店舗、輸入衣装のセレクトショップ『Dangerous nude』を展開しました。ただ、忙しすぎてクリエーティブに時間が裂けなくなってしまったんです。自分の作りたいものを作るためにセレクトショップは全店整理し、自分の物つくりに専念しようとここを始めました。」
お客さんはどんな方が多いのですか。
「ゴス・ファッション・ファンの方やバンドマンやライブに行かれる方たち。それ以外では舞台関係とジャグリングやポールダンサー、占い師といったパフォーマーさんたちです。あとは専門学校の入学式用にお作りすることもあります。販売は通販とオーダーが中心です。衣装などは打ち合わせしなければいけないので、ここに来ていただいています。」
ベッドとしてもテーブルとしても使える棺。
Made in 大田の“ゴシックリップ”
“大田区工場×ゴシックデザイン”をテーマに活動されていますが、ご説明ください。
「大田区の工場や職人さんとのコラボです。大人になってもファッションを諦めずに使えるアイテムを作ろうと考え、最初はバッグを製作しました。その次にコロナになる前に“ゴシックリップ”を作りました。大人になっても持ちたいと思える洗練されたゴシックデザインとしてのアイテムは、職人の腕と工場の確かな技術がないと完成しません。町工場とのアイテムを増やしていけたらいいなと思っています。何かやるなら大田区でと考えながらやっています。オールmade in 大田です。どんどんチャレンジしていきたいと思っています。」
ヴァンパイアが眠るような西洋棺を作っていらっしゃいますね。
「舞台装飾品をオーダーされる方がいて、『棺を作れませんか』というお話がありました。10年以上前のことです。棺や仏具の会社さんに問い合わせたのですが、『不謹慎に当たる。厳かなものだから、変なことやると業界から干されてしまうから作れません』と断られました。それで、いったん断念して、いつかやれたらなと漠然と思い続けていました。そうこうしている内にコロナ禍になりました。ライブとかイベントもないので、仕事が全くなくなってしまった。もう死んだと思って棺作ろう、棺を作ってリボーンしよう=再生しようと思って、あるお金を全部かき集めて、大田区の内装家具の会社にお願いしました。作り始めると職人さんだから、『ここはこうした方がいいよね』といった意見がいっぱい出てきて楽しかったです。まず1個作っていただきました。SNSで『こんなの作ろうと思っています』と何げなく発信したら、『私も欲しい!』という反応をたくさんいただいた。クラウドファンディングで受注を受けつつ開始しました。」
人形用の棺も制作していらっしゃいますね。
「人間用を見た方から、『人形用はありますか』というお問い合わせをたくさんいただき、作り始めました。made in 大田の新しいゴス・アートです。大田区からいろんなところに発信していきたいと思っています。」
具体的な予定はあるのですか。
「2024年にはアメリカでコレクション・ショーを行いました。2025年はイタリアのドール・イベント“il palazzo delle bambole〜人形たちの宮殿〜”に参加します。世界中の人形作家さんが出品されます。ミラノ近郊のブレシアという街で、貴族のお城のダンスホールを使って行われるイベントです。Made in 大田の新しいゴス・アート作品を世界に発信していきます。」
背負えるドール用棺
鉄溶接ドール用棺
今後のイベントなどの予定があれば、お教えください。
「大田区の流通センターで、I・Dollというドール・イベントが行われていたのですが、現在はお台場の東京ビックサイトで開催されています。商品としてはお人形用の棺を出品しますが、イベントとして人間用の棺を持ち込んで入棺体験をしてもらいます。お人形さんと一緒に棺に入って記念写真が撮れます。」
今後の展望についてお話しください。
「今までいろいろやってきましたから、今この場所は一旦集大成かなと思っています。危機裸裸商店独自の世界を知ってもらいたい。その一環として、大田区で工場とコラボして活動をしていることを広めていきたい。色んな工場と繋がると、新しい化学反応が起きて、新しいアイテムが生まれる。最初はイメージや見た目で断られる事もあるけど、想いをしっかり伝えると職人魂を燃やして沢山アドバイスを頂きながら一つの作品が完成する。ファッションやポリシーも同じで理解されない事が多いけど、私が工場と面白いアイテムを作ることで『そんな面白いこと出来るんだ!?』って偏見や垣根を壊していけたら嬉しいです。」
最後に六郷の魅力についてお教えください。
「皆さん、とてもフレンドリーです。このお店の内装は全部私が作ったのですが、作業中にも多くの方が『何やってるの』と聞いてきてくれました。お店を始めてからはテレビや雑誌を見て知っていただいたのか、『頑張ってね』とか『大田区でこんな面白いものがあるんだね』とか言ってくださる。羽田高校に行っていた時に、この辺りをよく歩いていて、色んな工場があるのを見てきました。まさか自分がそんな工場の皆さんと仕事ができるとは思っていませんでした。G-round*という雑色駅前で行われるマルシェがあります。その第1回目に参加させていただきました。青空入棺体験を開催したんです。雑色駅前に棺を置いて『どうぞ入れますよ』と呼びかけました。皆さん、結構喜んでくれて面白がってくれました。お婆さま方が『生前に棺に入ると寿命が延びるんだよ』と教えてくださって、何人もの方が参加してくださった。棺はラッキーアイテムだったんですね(笑)。」
取材は2025年9月
*ゴス:ゴシック(Gothic)のこと。B.ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』やH.ホルポー『オトラント城奇譚』などのゴシック小説に影響を受けた音楽、ファッション、アート、ライフスタイルを含むサブカルチャー。
*『バットマン』: 1989年、ティム・バートン監督作品。監督独自の作風『異形への愛』が際立つヒーロ映画。
*『シザーハンズ』:1990年、ティム・バートン監督作品。ハサミの手を持つ、人造人間の物語。ジョニー・デップ主演。
*ゴス・ロック:1970年代後半に誕生した暗く耽美な世界観と退廃的な美学を特徴とするロック。ゴシック・ホラー、ロマンチシズム、ニヒリズムといったテーマを扱う。ジョイ・ディヴィジョン、スージー・アンド・ザ・バンシーズなど。
*ポジティヴ・パンク:1980年前半にかけて、イギリスで広まったムーヴメント。ゴシックのグロテスクな部分を誇張した不気味なメイクをし、独特のダークで過激な世界観を表現。セックス・ギャング・チルドレン、カルトなど。
*80年代ニューウェイブ:パンクによるロックの解体後の再構築ムーヴメント。当時普及を始めていたデジタル・シンセサイザーをなど機材を使ったグループが多い。ウルトラボックス、ユーリジミクスなど。
*G-round:地域で描く円と縁をテーマに、水門通り商店街振興組合が主催となり、新しい有志連合でのマルシェ。2020年12月5日よりスタートし、2023年7月以降は2ヶ月に1回の隔月での開催。
まるで不思議な世界に迷い込んだようなエントランス
会期:2026年3月21日(土)11:30~16:30
会場:東京ビッグサイト 西展示棟(東京都江東区有明3-11-1)
アクセス:りんかい線「国際展示場駅」徒歩7分、ゆりかもめ「東京ビッグサイト駅」徒歩3分
今号の紙面で取り上げた冬のアートイベント&アートスポットをご紹介します。ご近所はもちろん、アートを求めてちょっと遠出をしてみてはいかがでしょうか。
最新情報は、各問合せ先にてご確認頂きますようお願い申し上げます。
2月1日、『馬込アートギャラリー』が開館します!大田区が所蔵する絵画などを収蔵・展示する施設です。書家・熊谷恒子の常設展示コーナーなど、地域ゆかりの作品をぜひご覧ください。

完成予定図
| 開館日 | 2月1日(日)9:00-16:30(入館は16:00まで) |
|---|---|
| 休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3) |
| 場所 | 東京都大田区南馬込4-10-4 |
| 料金 | 無料 |
| 問合せ | (公財)大田区文化振興協会 馬込アートギャラリー 03-6410-7960 ※休館日を除く |
スマイル大森をまるごと舞台にした大規模イベントを開催!すてきな演奏やダンス発表、作品展示、体験など楽しいことmorimoriなイベントです♪

| 日時 | 2月8日(日)10:00-16:00 |
|---|---|
| 場所 | 東京都大田区大森北4-6-7 大森北四丁目複合施設(スマイル大森) |
| 料金 | 無料 |
| 問合せ |
morimori🌲スマイルフェスタ実行委員会(事務局:大森北区民活動施設) |
公益財団法人大田区文化振興協会 文化芸術振興課 広報・広聴担当
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